入力端子のない世界最小の腕時計型プロジェクタを発表。
米Mitsubushi Electric Corporateは02月02日、腕時計型の小型プロジェクタを装備した”Wristwatch LED Image Projector (WLIP)”を公開した。RGB-LEDを光源にしたプロジェクタを搭載しているという。

腕時計型プロジェクタ Wristwatch LED Image Projector (WLIP)
「我々は過去に世界最小で最軽量のプロジェクタを販売したことがあるが、輝度が足りない、コントラストが低いなど、プロジェクタとしてあるまじき欠点を持っていた。用途が限られた商品として大きな問題を抱えていたのだ」(エレクトロニクス広報部 ジェムーズ・ボンド氏)
プロジェクタにとって、世界最小・最軽量はさほど重要ではない。同社が開発した小型プロジェクタの欠落した部分、輝度やコントラスト比が重要視されるものだ。ビジネスユースである場合、ある程度小型化してしまえば投射映像の画質が性能の鍵を握る。大きさよりも画質なのだ。
「我々だけではないはずだ。同じように小型プロジェクタを開発した企業は、小型化したことによる意味を模索していた。そして、我々は1つの方向性を見いだした。腕にはめて使えるまで小型化されたプロジェクタの用途、WLIPが答えだ」(同氏)
WLIPはSVGA(800×600)の解像度を持ち、DMDチップを採用している。LEDを光源としているため、消費電力が少なくてすみ、内蔵されているリチウムイオン電池によるバッテリ稼働が出来る。連続稼働時間は最長1時間だ。また、通常のプロジェクタが1,000時間から(長くても)3,000時間のランプ寿命に対して、20,000時間という長寿命を誇る。WLIPの特徴はそれだけではない。
「WLIPには接続端子が1つもない。唯一のインターフェースはSDメモリカードリーダーだけだ。SDメモリカードをWLIPに差し込むことによって、カード内部に保存されている動画や画像をプロジェクタで表示させることが出来る。極論を言ってしまえば、ただこれだけの機能なのだ」(同氏)
正確に伝えれば、外部オプションとしてS映像、コンポジット入力の端子を提供する予定であると同氏は伝える。オプション外部端子ユニットはWLIP本体よりも大きく、バッテリが別途必要となるため、あまり現実的な仕様ではないといえる。この点を同氏はこう説明する。
「我々の目指したのは、気軽に使えるプロジェクタだった。例えば家族旅行に行くとしよう。SDメモリカードに対応したデジタルカメラで撮影した写真を、泊まったホテルなどで手軽に見ることが出来る。輝度やコントラスト比が良くなくても、デジタルカメラの液晶画面よりは大きな画面で、皆で楽しむことが出来るだろう」(同氏)
用途をあえて限定することによって、従来のプロジェクタでは考えられない使い方を実現したということか。また、WIPSにはおまけとして2MB程度の内部メモリを持っている。この内部メモリ内のデータは、プロジェクタへ表示の後、自動的に消去する。映画ミッション・インポッシブルのような「なお、このメッセージは5秒後に自動的に消滅する」という使い方が出来る。
「大切なメッセージをデジタルカメラで撮影、内部メモリに保存して相手に渡す。WIPSと共に受け取った相手は、一度しか見られない映像をプロジェクタで表示することになる。これはとても素敵なことだと思う。私は早速、WIPSを使って彼女にプロポーズをする予定なのだ」と同氏は熱く語る。
この場合、データが消去するだけで映画ミッション・インポッシブルのようにWIPSごと燃えるようなことはないという。「我々の製品が燃えやすいというイメージを持っているのは、日本だけだ」と同氏は多少興奮しながら付け加えた。
開発完了と同時に用途を失った世界最小・最軽量のプロジェクタは、我々の考えるプロジェクタという枠を超えて帰ってきた。「販売価格は500ドル前後を予定している。WIPSの発売日に、私はもう1つの記念日を持つだろう」と同氏は意気揚々と席を後にした。
なお、WLIPの詳細な情報は現時点では公開されていないが、熱処理の問題を完全に解決できていないため、発売時期は来年を目処にしているという。また、腕時計の形はしているが、時計表示の機能はない。
2005年09月11日 公開
2010年08月03日 記事内日付変更(09月11日->02月02日)