postheadericon 新発想のバリアフリー対応昇降システムを発表。

01月12日、東曰本鉄道株式会社(JR東曰本)は、株式会社日本メディカル(JDE5CAL)と共同開発したバリアフリーな昇降システムを、東京駅12番ホームに設置すると発表した。階段を改良し、坂道に変化させることが可能だという。

バリアフリー昇降システム

バリアフリー昇降システム


「今回発表する新しい昇降システムは、車椅子を利用している方にとって非常に便利な製品となるだろう。この昇降システムは従来からある階段を少し改善しただけに過ぎず、エレベータの設置が不可能な小さな駅であっても、多少の工事で設置することが可能だ。もちろん、設置コストの大幅な削減にもなるだろう」(JR東曰本広報担当 車井輔太郎氏)

多少の改善によって大きな効果が生まれるとすれば、利用する側はもちろんのこと、設置する側にとっても嬉しいことだと思う。従来では駅のホームにエレベータやエスカレータを設置する作業は大規模な工事が必要であり、小さな駅では非常に難しいことであった。しかし、同社の昇降システムによってこの現実が大きく変わろうとしている。

「仕組みは非常に単純である。階段が階段であるがために存在する段差を、ボタン1つで無くすことが出来るというだけだ。変化する部分は階段端の95cmのみ。つまり、95cm以上の幅を持つ階段であれば、設置することが可能ということだ。階段の段差を閉じることによって、坂道と変化する。坂道であれば車椅子であっても自由に上り下りすることが出来るだろう」(車井氏)

昇降システム(断面図-sectionB)

昇降システム(断面図-sectionB)

階段の段差が無くなることで坂道が生まれる。確かにその通りだが、急勾配な坂道となってしまい、車輪のある車椅子では非常に危険だと予想される。しかし、この問題は今までに培った独特の技術によって解決したと車井氏は語る。共同開発者である株式会社日本メディカルが開発時の苦労を語ってくれた。

「JRで使われている一般的な階段は、蹴上げ(段の高さ)16.5cm、踏面(踏板の幅)が33cmとなっている。坂道になった場合を想定すると斜面の角度は26.5度だ。公共施設によくあるスロープの傾斜角度は4~11度であり、15度以内にするべきであると言われている。我々は傾斜角度の差をなんとかして解決しなければならなかった」(JDE5CAL 九社明衣氏)

車椅子用のスロープに関して言えば、段差の6倍の長さが基本だと言われている。今回の場合、蹴上げ(段の高さ)が16.5cmでは99cmの長さが基本であり、この場合の傾斜角度は約9.5度となる。26.5度という急斜面をそのまま走れば、間違いなく事故が発生するだろう。

「そこで我々が考えたことは、坂道の下部に重量測定器を仕込み、車椅子の速度(重量の移動)に合わせて、ゆっくりと傾斜角度を変えていくことだった。緩いS字がゆっくりと波を打つような動きをイメージして頂きたい。我々の努力と技術力の結果、最大傾斜角度を15度以内に収めることに成功した」(九社氏)

九社氏は「傾斜角度と同じように重要な問題として、安全性の確保があった」と苦労を伝える。重量測定器の移動結果が急激になった場合、踏面に仕込まれているストッパーが立ち上がり車輪を固定させる。同時に、踏面上がエアバックのように膨れ、転倒時における衝撃を和らげることが可能だ。

「車椅子といっても複数の種類が存在するが、我々は気の遠くなるほどの動作確認を行い、完全ともいえる安全性を求めた。また、車椅子に限らず、ベビーカーやショッピングカードでも何百回というテストを行った」と九社は語る。しかし、最大の安全性は他にあるという。

「最大のバリアフリーは心理的な面での改善だと我々は考えている。つまり、人々の助け合う心が大事なのだ。障害を理解し、やさしい心、思いやりのある心を持って接する気持ちが最大で最高のバリアフリーだと思う。皆がバリアフリーな気持ちをもってくれれば、この新しい昇降システムもより使いやすくなるだろう。」(九社氏)

今の日本ではバリアフリーという言葉が蔓延しているが、本来の意味を知っている人がどれだけいるのだろうか。バリアフリートイレ(オストメイト/多目的トイレ)を一番に使う若い主婦、優先席を専有する学生、手すりの近い場所に座り込む子供、彼(彼女)らの行動を直す装置は存在しない。目に見えない壁がある。この壁こそ壊す必要のあるものだろう。壊そうと思えば簡単に壊れるのだから。

2005年04月15日 公開
2010年08月03日 記事内日付変更(04月15日->01月12日)

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